第4回 時効の援用

時効とは、ある事実が一定期間継続すると、それによって権利の取得や喪失が生じるという制度です。
例えば、スナックのママが、客のAさんの「つけ」で貯めている飲み代を、Aさんに1年間請求しないでいると、時効で、飲み代を払えという権利を失う場合があります。これを「消滅時効」といいます。また、Bさんが、他人の土地を自分のものだと思って、勝手に建物を建てて、20年間占有し続けと、Bさんは時効で、その土地を取得することができる場合があります。これを「取得時効」といいます。
これらの効果(権利の取得や喪失)を得るためには、ある事実が一定期間継続(これを期間の経過による時効の完成といいます。)するだけでなく、その後、AさんやBさんが、時効の利益(効果)を受けるという意思表示をしなければなりません。これを「時効の援用」といいます。
しかし、前の例で、Aさんが、1年間、スナックのママから何も請求されずに過ぎた後で、時効を援用せずに、飲み代(これを債務といいます。)を払ってしまったらどうなるのでしょうか?
答えは、その飲み代について、もはや時効の援用をすることは許されないとされています。これを「援用権の喪失」といいます。このことは、たとえAさんが時効で飲み代を払わなくてもいいことを知らなかった場合でも同じです。また、飲み代の全部を払わなくても、一部を払ったり、支払を待ってもらったり、まけてもらう申し出をしただけでも同じです。これらを「債務の承認」といいます。
昨今、消費者金融(サラ金)が、貸金を請求しないで放置し、時効で、債務者がその借金を返済しなくてもいいにもかかわらず、その貸金の回収のために、一部の返済を求めたり、減額の話を持ちかけたりして、この債務の承認を得ようとしているようです。
しかし、裁判所の考え方(これを判例といいます。)の中には、債務の承認と見られる行為・言動があったとしても、取引経験、法的知識において圧倒的に勝る消費者金融(債権者)が時効の完成を知りつつ、法的に無知な消費者(債務者)にあえてこれを告げないまま借金(債務)の一部の弁済をさせたような場合や、消費者金融(債権者)が、消費者(債務者)の時効援用の主張を封じるために、時効完成後も甘言を弄して少額の弁済をさせた上で、態度を一変させて残元金及び多額に上る遅延損害金を請求するような場合は、信義則の原則を適用して消費者(債務者)の時効援用権を制限するよりも、本来の時効の効果をそのまま維持することが、時効制度の趣旨からも公平の観点からも合理的といえるとしています。
なお、借金の場合の消滅時効にかかる一定期間については、消費者金融が会社(法人)の場合や、消費者が商人で事業のために借りた場合には、商法の適用があり、5年ですが、消費者金融が個人で、消費者がサラリーマンや主婦などの個人の場合には、民法の規定により、10年となります。
以前借金をしたことがあるが、返さないまましばらく請求がなかったような場合は、時効のことを考えてみましょう。
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