クーリング・オフ

世の中が不景気になり、訪問販売、SF商法、キャッチセールス、アポイントメントセールス、電話勧誘販売、マルチ商法、業務提携誘引販売、継続的役務取引などで、多額の金品を騙し取ろうとする悪徳商法が横行しています。特に高齢者の方が、業者の言葉巧みな話術に騙されて、必要のない物を買ったり、サービスを受ける契約をしてしまい、多額の金銭を要求される場合が多いようです。
問題は、こうした悪徳商法に引っ掛かって業者と契約をしてしまった場合、その契約は守らなければいけないのかと言うことです。
騙されたことを証明できれば、契約を取消すことができますので、契約を守る必要はありませんが、そのためには証拠がなければなりません。言った言わないでは証明したことにはなりません。騙されたことを証明することはとても困難です。
それでは契約どおり、不本意な多額の金銭を払わなければならないのかということになりますが、そのような場合に消費者を救済するいくつかの法律があります。その中の法律の一つに「特定商取引に関する法律」があります。この法律は、訪問販売、通信販売、マルチ商法などの特殊販売による消費者の救済・保護を目的とした法律です。
この法律の中に「クーリング・オフ」という制度があります。これは、訪問販売など特定の取引について、消費者が業者と不本意な契約をした場合、一定の期間内であれば、消費者が自由に契約を白紙撤回できるという制度です。
訪問販売など特定の取引は、セールスマンから不意打ち的に勧誘されるため、十分な情報や冷静に考える余裕もないまま、つい契約してしまうことが多いため、契約書面(法定書面)を受け取った日から一定期間は、頭を冷やして(cooling)、契約から離れる(off)機会を与えたのです。
クーリング・オフは、契約を解除したい旨の通知書を業者に送れば、届かなくても、その効果が生じます。また、理由を説明することなく一方的に契約を解除できます。クーリング・オフをすると、無条件で契約を解除できますので、業者は損害賠償や違約金など、消費者に負担を負わせるような一切の請求をすることはできません。また、支払った代金は全額返金されますし、商品を受け取っている場合は、業者の負担で商品を引き取ってもらえます。
クーリング・オフは消費者の被害防止・救済のための一つの手段です。他にも消費者の被害防止・救済のため法律や手段がありますので、できるだけ早い時期に専門家に相談することが必要です。