財産管理・遺産承継

少子高齢化社会に向けて、お年寄りが認知症になった後の財産管理や身上監護について、認知症の程度に応じて、新たに成年後見・保佐・補助の制度が整備されました。

またこれと併せて、お年寄りが認知症になる前に、契約で認知症になった場合の財産管理や身上監護について、予め親族や司法書士、弁護士、社会福祉士等の専門家に依頼するための制度が整備されました。

この契約を任意後見契約と言います。

この契約は公証役場で公正証書にします。また依頼された任意後見人は、法務局(登記所)で登記されます。依頼する契約内容(具体的には代理権目録に記載されます。)を、お年寄りが認知症になる前に自分の思い通りに決めることができますので、認知症になった後も、自分の気持ちに反することなく、財産管理や身上監護を受けられるので安心です。

また、任意後見契約と併せて従来からある任意代理契約をすることがあります。任意後見契約は、認知症になった後の契約なので、その前から財産管理や身上監護を受けたい場合には、この契約をしておくとよいでしょう。

1 いわゆる「老いじたく」としての老後の備えとしては、どのようなしくみ等がありますか?

いわゆる「老いじたく」としての老後の備えとして、次のような契約や意思の表明、しくみがあります。

(1)見守り契約:財産管理や身の回りのことは本人が行って、定期的に、本人とお茶を飲んだり、世間話をしながら、本人の精神状態や体力的な衰えなどの健康状態を見守り、任意後見制度(任意後見契約)や法定後見制度を利用する時期を把握し、判断してもらいたいときにしておく契約です。

(2)ホームロイヤー契約:司法書士や弁護士等の専門家に、身近な相談相手として、生活設計や財産管理の心配事について助言してもらいたいときにしておく契約です。

(3)任意代理契約(財産管理委任契約):まだ認知症ではなく精神的にはしっかりしているが体力的に思うように身体が動かないなど日常生活に不自由を生じた場合に、預貯金や不動産などの財産を管理してもらいたいときにしておく契約です。

(4)任意後見制度(任意後見契約)・法定後見制度:認知症になり判断能力が衰えたときに保護や支援をしてもらいたいときに利用するしくみです。

(5)尊厳死宣言書:医療機関等での延命治療を拒否して、自然に死を迎えたいときにしておく意思の表明です。

(6)信託契約・自己信託:破産や死亡など自分にさまざまな事情が生じたとしても、それらに影響を受けることなく、自分の気持ちや思いをそのまま財産管理に反映したいときにしておく契約であり、意思の表明です。

2 死後の備えとしては、どのようなしくみ等がありますか?

死後の備えとしては、死亡後の財産の処分について、自分の意思を反映させることはとても大切なことであり、そのための制度として、遺言があります。遺言には、死亡後の財産の処理・清算、遺言執行者等を記載しますが、感謝の気持ちや贈る言葉等を添えることもできます。このような遺言を書くこと以外の死後の備えとしては、次のような契約や意思の表明があります。

(1)遺言による信託:遺言で本人の死亡後も、自分の意思をそのまま財産管理に反映したいときにしておく意思の表明です。

(2)死後の事務委任契約:本人が死んだ後に必要となる、通夜、告別式、火葬・埋葬に関する事務、死亡後の各種届出事務や公共料金等の支払いなどの残債処理、費用の清算事務等の手続きなどをしてもらいたいときにしておく契約です。なお、任意後見人は、本人が死亡すると、その相続人に財産が引き継がれるまで、本人の財産を管理し、相続人がいない場合は相続財産管理人の選任の申立てを行いますが、この死後の事務委任契約を、任意後見契約とは別にしていないと、本人の死後の事務を行うことはできません。

3 財産管理・遺産整理の費用はどのくらいかかりますか?

財産管理・遺産整理にかかる費用は、司法書士の報酬と印紙代・予納金・郵券等の実費になります。司法書士の報酬は、次のとおりです。

種  別

報酬(消費税込)

相談料

30分ごと5,500円

法定後見

法定後見申立書類作成

88,000円~

法定後見人報酬

月額30,000円~50,000円
裁判所が事案に応じて決定

任意後見

見守り契約書案作成

33,000円~

見守り契約

月額5,500円~
資産の総額に応じて合意

任意代理契約書案作成

55,000円~

任意代理契約

月額11,000円~
資産の総額に応じて合意

任意後見契約書案作成

88,000円~

任意後見契約

月額33,000円~
資産の総額に応じて合意

任意後見監督人選任申立書類作成

88,000円~

任意後見監督人報酬

裁判所が事案に応じて決定

死後事務委任契約

220,000円~550,000円

財産承継手続き

別紙参照

遺言

遺言作成の支援・指導

55,000円~

公正証書遺言作成の立会・証人

1人につき11,000円~

遺言執行手続き

別紙参照

遺産整理手続き

別紙参照

相続登記

77,000円~

その他

上記以外の各種裁判所申立書類作成

55,000円~

不動産の処分に関する契約代理

契約価格の3.3%

不動産の処分に関する媒介契約の代理

55,000円~220,000円

不動産の管理に関する契約代理

賃料・管理費等の合計額の1か月+消費税

事務処理のための出張

1時間ごと5,500円

別紙

財産承継手続き・遺言執行手続き・遺産整理手続きの報酬

資産の総額(相続税評価額)応じて、165,000円に下記金額を加算した額

資産の総額が5,000万円以下の部分

資産の総額の1.65%

資産の総額が5,000万円を超え1億円以下の部分

資産の総額の1.32%

資産の総額が1億円を超え3億円以下の部分

資産の総額の0.77%

資産の総額が3億円を超える部分

資産の総額の0.44%

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